富山大学の坪見博之先生と、成城大学の中村國則先生にお越しいただき、第5回認知科学セミナーを開催します。
日時:2014年6月21日(土)14:00-17:30
場所:名古屋大学教育学部大会議室
講演: 坪見博之先生(富山大学) 「視知覚とワーキングメモリの容量制約」
- 視覚性ワーキングメモリは、環境から得た視覚情報を一時的に保持するための記憶機能であると言われている。主な特徴として、(1)ワーキングメモリに 同時に保持できる数は物体三つ程度に限られており、(2)ワーキングメモリの保持は持続的な脳神経活動(delay activity)によって支えられることが知られている。従来この二つの特徴は「視界から消え去った環境情報」の保持に特化していると考えられてきた。 しかし、発表者の最近の研究では、物体が「目の前 に存在し続けるとき」にもこの二つの特徴が観察されることが示された (Tsubomi, Fukuda, Watanabe, & Vogel, 2013, J. Neurosci)。このことから、目の前に存在する環境情報を顕在的に表象するための視知覚のシステムにも、ワーキングメモリと非常に類似した容量の制約と脳神経活動があると考えられる。また、今回の発表では、視知覚とワーキングメモリの類似性に加え、表象操作性の違いについても最近おこなっている研究を紹介したい。
中村國則先生(成城大学) 「道徳・意図・確率・因果」
- 近年、道徳のジレンマ(Greene et al, 2001, Science)や意図性の判断 (Knobe, 2003, Analysis)に関する研究を嚆矢として、実験哲学(experimental philosophy)と呼ばれる研究分野が注目を集め始めている。本発表ではこの分野の動向を紹介するとともに、不確実性と因果構造という観点から筆者が近年行っている研究(e.g., Nakamura, 2013 Thinking and Reasoning)についても報告したい。
企画者:清河幸子(教育発達科学研究科准教授)