心理危機マネジメントコースについて
心理危機マネジメントコースは、さまざまな領域における危機管理への関心の高まり、および危機理論、実践モデルの構築と発展の必要性といった背景から、心理危機への組織的・包括的アプローチ(心理危機マネジメント)に関する研究者・実践家を養成する目的で、2008年4月、博士後期課程に新コースとして設置しました。当コースでは、災害や事件・事故といったテーマにとどまらず、医療や教育、福祉、産業、司法をはじめとした、あらゆる領域における心理危機に関するテーマと、個人から、家族、集団、組織、コミュニティまで幅広い水準の対象を扱います。さらに、人の生涯におけるライフステージ上で生起する発達的、状況的、実存的、精神医学的に分類される多様な危機が含まれます。これらの心理危機に対する対応や回復のみならず、予防や準備段階を含めた体系的、包括的な理論や実践モデルに関する研究も、本コースの重要な取り組みの一つとして位置付けています。
本コースは、医療や教育、福祉、産業、司法等の領域で、こころの問題や心理危機にかかわる仕事に従事している現職の社会人を対象に、臨床心理学や社会心理学、発達心理学、認知心理学、パーソナリティ心理学、計量心理学をはじめ、経営組織学、マネジメント学等の幅広い学問領域を背景にして、心理危機への組織的・包括的アプローチ(心理危機マネジメント)の理論と実践モデルの構築を目ざすものです。これまでに行政、医療・教育・福祉・産業・司法領域等から、公務員、教員、医師、心理職など多彩な人材が入学し、各自が日々の実践に即したテーマを題材とした研究に取り組んでいます。
定員
若干名(4名程度)
コースの教育目標
本コースは、こころの問題や心理危機にかかわる仕事をしている社会人を受け入れ、心理学を背景とした心理危機への組織的・包括的アプローチ(心理危機マネジメント)に関する研究と実践の最前線をリードする高度な研究能力と人間についての深い学識や専門的力量を持った人材を養成することを目的としています。これは我が国初の取り組みであり、この専門知識と技能を各自のフィールドで生かすことのできる優れた心理危機マネージャーの輩出を目指します。
取得できる学位
博士(心理学)
出願資格と履修体制
出願条件は、修士(相当する学位、経験、心理学に関する研究能力を含む)の学位を有するもので、原則として関連分野での社会人経験を3年以上もつ人です。スクールカウンセラーや教員、被害者支援、子どもの発達やこころの問題、心理的危機に関わる仕事等の経験を有している人を対象としています。本専攻では、在職のまま学位取得ができるような仕組みを持っております。このコースの学生も、在職のまま授業を受け、研究を行い、修了することができます。本コースは、名古屋大学大学院教育発達科学研究科心理発達科学専攻の教員全員で担当しています。各自の研究テーマに応じて事前に教員と個別相談の上、指導教員を選択し、月に1回の授業とは別に研究指導を受ける体制となっています。
授業
授業は各自が進めている研究に関して、教員を含めた参加者全員のディスカッションが主となります。各自が授業外において自身の研究を進めていくことが必要です。基本的に毎月第二、もしくは第三土曜日にハイブリッド方式で行なわれています。
2024年度11月の授業
対面、オンラインを併用して第6回授業が開催されました。研究発表で4名が発表し、教員5名、院生9名により、活発な意見交換が行われました。
博士論文の構想発表テーマ 「AET理論を用いた『上司の不作法』に対する『部下の葛藤』に関する研究」「大学生における自殺の保護因子に関する研究」「学生相談における加害学生のカウンセリングに関する研究-関係の構築と維持-」「犯罪被害者体験の意味づけとその支援-特に刑事裁判に着目して―」
2024年度10月の授業
対面、オンラインを併用して第5回授業が開催されました。教員の講義と、研究発表で2名が発表し、教員4名、院生8名により、活発な意見交換が行われました。
講義 「質問紙調査法について」
博士論文の構想発表テーマ 「中高年におけるペット死別悲嘆と情緒的関係性との関連」「レイオフ・サバイバーへの対処資源としてのソーシャル・キャピタルに関する一考察」
2024年度7月の授業
対面、オンラインを併用して第4回授業が開催されました。研究発表で4名が発表し、教員4名、院生11名により活発な意見交換が行われました。
博士論文の構想発表テーマ 「博士論文の構想について」「社会的養護にある児童へのトラウマケアとしての音楽の役割」「常勤SCの教員との連携協働関係確立プロセス」「陸上自衛隊における心理職の役割」
2024年度6月の授業
対面、オンラインを併用して第3回授業が開催されました。研究発表で4名が発表し、教員5名、院生10名により、活発な意見交換が行われました。
博士論文の構想発表テーマ 「Pet Bereavement Questionnaire日本語版の作成、及び信頼性と妥当性の検討」「学生相談における加害学生との関係性に関する研究ー個別相談における作業同盟の構築と維持ー」「犯罪被害者の回復とその支援」「修士課程の研究成果と博士課程の展望(補足研究テーマ:生徒間問題行動をおこなさい取り組みと生徒間の暴力行為の予兆を発見できる尺度の開発)」
2024年度5月の授業
対面、オンラインを併用して第2回授業が開催されました。研究発表で4名が発表し、教員4名、院生11名により、活発な意見交換が行われました。
博士論文の構想発表テーマ 「陸上自衛隊における心理職の役割」「生きる理由が大学生の自殺念慮に及ぼす影響」「レイオフ・サバイバーへの対処資源としてのソーシャル・キャピタルに関する一考察」「職場における上司に対する「部下の葛藤」に関する研究」
2024年度3月の授業
対面、オンラインを併用して第8回授業が開催されました。研究発表で1名が発表、D3の院生4名が簡単な最終報告をし、教員3名、院生11名により、活発な意見交換が行われました。
博士論文の構想発表テーマ 「職場いじめの実態と発生要因」「がん治療と仕事の両立における心理的プロセスの検討」「システム心理力動的アプローチを用いた大学生の心理危機への支援に関する研究―学生相談の観点から―」「不登校経験者が社会的自立に至る心的な成長の機序について」「高等学校の教育相談担当教員が教育相談コーディネーターの役割を見出すプロセス」
2023年度12月の授業
対面、オンラインを併用して第7回授業が開催されました。研究発表で3名が発表し、教員6名、院生11名により、活発な意見交換が行われました。
博士論文の構想発表テーマ 「生きる理由が大学生の自殺念慮に及ぼす影響」「ペット喪失体験の検討―日本版Pet Bereavement Questionnaire の作成にむけてー」「職場における上司に対する部下の葛藤に対する研究」
2023年度11月の授業
対面、オンラインを併用して第6回授業が開催されました。研究発表で4名が発表し、教員6名、院生11名により、活発な意見交換が行われました。
博士論文の構想発表テーマ 「システム心理力動的アプローチを用いた大学生の心理危機への支援に関する研究―学生相談の観点から―」「不登校経験者が社会的自立に至る心的な成長の機序について」「陸上自衛隊における心理職の役割 博士論文構想とレビュー論文を中心に」「レイオフ・サバイバーへの対処資源としてのソーシャル・キャピタルに関する一考察」
2023年度10月の授業
対面、オンラインを併用して第5回授業が開催されました。光永先生に「質問紙調査法」について講義いただき、研究発表で2名が発表し、教員6名、院生10名により、活発な意見交換が行われました。
講義 「質問紙調査法について」
博士論文の構想発表テーマ 「がん経験者の キャリア・パースペクティブの揺らぎ ~個別事例の語りから~」「高等学校の教育相談担当教員が教育相談コーディネーターの役割を形成するプロセスとその促進要因について」
2023年度7月の授業
対面、オンラインを併用して第4回授業が開催されました。町田先生(ジェンダーダイバーシティセンター)に研究紹介をいただき、研究発表で3名が発表し、教員6名・院生11名により、活発な意見交換が行われました
研究紹介のタイトル 「質的研究法レクチャー」
博士論文の構想発表テーマ 「中高年における ペット喪失体験の検討ー(研究1)生成した プロセスと次の課題ー」「学生相談における加害者への対応に関する研究」「職場いじめの実態と発生要因の検討」
2023年度6月の授業
対面、オンラインを併用して第3回授業が開催されました。研究発表で4名が発表し、教員6名・院生11名により、活発な意見交換が行われました。
博士論文の構想発表テーマ 「陸上自衛隊における心理職の役割」「レイオフ・サバイバーへの対処資源としてのソーシャル・キャピタルに関する一考察」「生きる意味が大学生の自殺念慮に及ぼす影響」「上司と部下の葛藤発生時の部下のネガティブ感情とその緩和に関する研究」
2023年度5月の授業
対面、オンラインを併用して第2回授業が開催されました。研究発表で4名が発表し、教員6名、院生11名により、活発な意見交換が行われました。
博士論文の構想発表テーマ 「職場復帰、就労継続に影響を与える心理的要因の検討」 「システム心理力動的アプローチを用いた大学生の心理危機への支援に関する研究―学生相談の観点から―」 「不登校経験者が社会的自立に至る心的な成長の機序について」 「高等学校のチーム支援における教育相談コーディネーターのコーディネーション行動を促進する要因の研究―権限・役割意識に着目して―」
2022年度12月の授業
対面、オンラインを併用して第7回授業が開催されました。研究発表で4名が発表し、教員4名、院生12名により、活発な意見交換が行われました。
博士論文の構想発表のテーマ 「精神科病院における熟練心理職の判断についての研究」 「高等学校の教育相談コーディネーターがバーンアウトに至るプロセスとその回避要因の研究」 「陸上自衛隊における心理職の役割」 「生きる意味が大学生の自殺念慮に及ぼす影響」
2022年度11月の授業
対面、オンラインを併用して第6回授業が開催されました。研究発表で4名が発表し、教員5名、院生13名により、活発な意見交換が行われました。
博士論文の構想発表のテーマ 「不登校経験者が社会的自立に至る心理的な成長の機序について」 「発達障害学生の支援における包括的体制整備と求められる機能」 「がん経験者の休職期間前後の人生観、死生観、仕事観・キャリア感の変化」 「システム心理力動的アプローチを用いた大学生の心理危機への支援に関する研究」
2022年度10月の授業
対面、オンラインを併用して第5回授業が開催されました。午前は、光永先生の研究法に関する講義があり、午後は、研究発表で2名が発表し、教員4名、院生13名により、活発な意見交換が行われました。
博士論文の構想発表のテーマ 「私立学校における生徒支援委員会の機能化についての研究」 「人工呼吸器を装着した重症心身障がい児の社会参加」
2022年度7月の授業
教員5名、院生12名により、対面、オンラインを併用して授業が開催されました。博士論文の構想について院生が発表し、活発な意見交換が行われました。
博士論文の構想発表のテーマ 「陸上自衛隊における心理職の役割」 「生きる意味が大学生の自殺念慮に及ぼす内容」 「レイオフ・サバイバーへのソーシャルキャピタルを基盤とした支援アプローチの研究」 「「明るく、風通しのよい」職場づくり」
2022年度6月の授業
教員5名、院生12名により、対面、オンラインを併用して授業が開催されました。博士論文の構想について院生が発表し、活発な意見交換が行われました。
博士論文の構想発表のテーマ 「がん治療と仕事の両立プロセスの検討 ~心理・実存的要因に焦点を当てて~」 「システム心理力動的アプローチを用いた大学生の心理危機への支援に関する研究 」 「不登校経験者が社会的自立に至る心的な成長の機序について」 「高校におけるコーディネーター型チーム支援を推進するSCコンサルテーションモデルの研究」
2022年度5月の授業
教員5名、院生12名により、対面、オンラインを併用して授業が開催されました。博士論文の構想について院生が発表し、活発な意見交換が行われました。
博士論文の構想発表のテーマ 「私立学校における生徒支援体制構築に関する要因についての研究」 「人工呼吸器を装着した重症心身障がい児支援の状況」 「単科の精神科病院で勤務する心理士が抱える課題」 「発達障害学生に対する包括的支援と求められる機能」
研究
在籍者(授業参加者)の研究テーマ一覧です。(2023年6月現在)
- D3
- がん治療と仕事の両立に関する研究
- 高等学校のチーム支援における教育相談コーディネーターの活動を促進する要因の研究
- 不登校経験者が社会的自立に至る心的な成長の機序について
- 大学生の心理危機への支援に関する研究
- 職場いじめの実態と発生要因に関する研究
- D2
- 陸上自衛隊における心理職の役割
- レイオフ・サバイバーへの対処資源としてのソーシャル・キャピタルに関する研究
- 大学生の自殺の保護因子に関する研究
- 上司と部下の葛藤発生時の部下のネガティブ感情とその緩和に関する研究
- D1
- 中高年におけるペット喪失体験の検討
- 学生相談における加害者への対応
受験をお考えの皆様へ
心理危機マネジメントコースでは、北海道、関東、関西、九州等、日本全国から集まった社会人学生が在籍し、それぞれの専門を活かした研究に取り組んでいます。本コースへの入学を検討されている方は、入試案内のページをご参照いただくとともに、指導を希望する教員に連絡をとってください。
お問い合わせ先
〒464-8601 名古屋市千種区不老町 名古屋大学大学院教育発達科学研究科 心理危機マネジメントコース shinrikiki [at] educa.nagoya-u.ac.jp (atを@に変えてください。)